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2005/05/30

農学用語集

あしゅ 亜種 subspecies 種の下位の分類階級。亜種間の生殖的隔離は、多くの場合不完全である。[生辞] 関連 変種
あんぜんせい 安全性の増大 育種の効果の一つ。安定した収量を確保するために、より安全性の高い品種の育成が望まれる。早生耐病性のイネ品種(藤坂5号、オイラセ、トワダ)による東北地方の稲作、耐雪性コムギ品種による裏日本の麦作の安定化。耐病虫性品種による安定した収量の確保。
いくしゅ 育種 breeding 有用生物の遺伝的性質を人間が希望するように改良すること。既存品種の劣ったところを改良していくため、品種改良とも呼ばれる。
いくしゅぎじゅつ 育種技術体系 変異の探求と創成、変異の選択と固定および新種の増殖と普及から成る。
いくしゅのこうか 育種の効果 育種による効果として、1.栽培限界の拡大。2.品質の改善。3.安全性の増大。4.収量の増加。5.経営の合理化がある。
いでんしがた 遺伝子型 genotype 表現型の対語。遺伝子型によって現れるべき表現型は、条件によって、必ずしも、同一の遺伝子型個体群に同じように発現されない。遺伝子の表現効果は、絶対的なものではない。その尺度として、表現度浸透度がある。
いでんしきゅうげん 遺伝子給源 gene pool
いでんりつ 遺伝率 heritability 狭義の遺伝率広義の遺伝率実現遺伝率がある。
きょうぎのいでんりつ 狭義の遺伝率 narrow-sense heritability ある量的形質に関し、与えられた集団中での表現型分散のうち、相加遺伝分散が占める割合。

狭義の遺伝率h^2=相加遺伝分散Va/表現型分散Vp

ポリジーン支配を受ける連続変異を示す形質の遺伝を取り扱う上で、基礎となる量。集団内変異のうち、どれだけが後代に伝わるかという率を与える。

こうぎのいでんりつ 広義の遺伝率 broad-sense heritability
じつげんいでんりつ 実現遺伝率
いでんしげん 遺伝資源
いるいこうはい 異類交配 disassortative mating
えいようはんしょく 栄養繁殖 vegetative propagation 作物では、塊根で増えるものとして、サツマイマ、キャッサバ、ダリア、塊茎によるものは、ジャガイモ、キクイモ、シクラメン、球茎によるものは、クロッカス、フリージア、グラジオラス、鱗茎によるものは、ニンニク、チューリップ、ヒアシンス、地下ほふく茎によるものは、シバ、バーミュダグラス、ベントグラス、地上ほふく茎によるものは、ケンタッキー・ブルーグラス、バーミュダグラス、茎の切片によるものは、サトウキビがある。それらの遺伝子型は、元来、ヘテロであり、また、自家不和合性や自殖弱勢を示すものが多い。ヘテロ性が高いため、雑種を作った場合、高い雑種強制の発現は期待しがたく、むしろ、劣性の有害遺伝子のホモ化が生じる場合がある。作物の繁殖では、罹病組織を除去し、ウイルスフリーの組織を用いることが必要である。実生繁殖では、ヘテロ性の遺伝的分離により、品種特性の維持ができない。倍数化によって育成した品種には、減数分裂による品種特性の分離の問題がないため、種子植物に比べて、倍数体の巨大性の利用が容易である。繁殖によって、遺伝子型は変化しないため、育種操作上、固定をする必要はない。特に、F1雑種を育成する場合、F1集団から所用のものを選抜し、栄養系として繁殖を行うだけでよい。しかし、繁殖に用いられる栄養器官が大型で水分含量の高いのもが多く、作物としての貯蔵や輸送が困難である。また、増殖率は、種子繁殖のものと比べて、かなり低い。
えふわんひんしゅ F1品種 F1 variety F1のもつヘテロシスを利用した品種。野菜に多い。同一の遺伝子型の集団であるので、品種の均質性と永続性をもつ。自家受精作物であるが、一つの花から得られる種子数が多いトマト、ナス、タバコは、一回の人工交配で高い種子生産量を有し、雑種強勢の程度も大きいため、コスト的にF1品種の商用化が可能であった。また、日本のカイコやアメリカのトウモロコシ、中国のハイブリッドライスが代表例としてある。中国では、indicaとjaponica間の遠縁交雑によるハイブリッドライスの作付けによって増収に成功している。F1品種の育成は、雑種強勢育種法によって行う。
かんおんせい 感温性 sensitivity of temperaturre 季節変化のシグナルとして、気温条件を利用し、基本栄養生長から生殖生長への相の転換を誘引し、生長から生殖生長への相の転換を誘引し、生育に厳しい環境条件となる前に登熟する性質。主働遺伝子が支配している。越冬性作物のアブラナ科作物やムギ類では、冬から春への気温変化を利用した低温要求性(vernalization requiewment)をもつ。イネでは、高温により、生長相の転換が促進される。
かんきょうへんい 環境変異 環境は、遺伝的差異を強調することもあるし打ち消すこともある。
かんこうせい 感光性 photoperiodic sensitivity 日長反応性(sensitivity fo day length)と同義。季節変化の指標として最も安定な、日照時間を季節変化のシグナルとして用い、基本栄養生長から生殖生長への相の転換を誘引し、生育に厳しい環境条件となる前に登熟する性質(イネやムギにみられる)。主働遺伝子支配である。夏雨型モンスーン気候に適応しているイネは、短日条件で生長相の転換が促進され(西日本の晩生イネ品種は、6~8葉期で感応し始める)出穂し、秋冷前に登熟する。このような短日性であるイネが、高緯度地方へ適応するために、感光性を失い、大きな感温性と耐冷性(cool weather resistance)を備えることが必要であった。非感光性のイネ品種の突然変異体の多くは、早生型となる。冬雨型の地中海気候でのムギ類は、冬から春期の雨によって生育し、春の長日条件で出穂し、乾期前に登熟する。温度と水条件の変動の少ない熱帯地方では、花芽形成に特定の日長を要求することはない。また、長日処理で開花期を調節する電照ギクは、感光性を利用した任意の時期のキクの生産を目指したものである。
きせつてきおうせい 季節適応性 seasonal adaptability どの程度の範囲の季節に適応しているかを指す。野菜の時無し品種は、感光性と低温要求性を失わせることで、周年生産および出荷を可能としたもの。
きほんえいようせいちょうせい 基本栄養生長性 basic vegetative growth 栄養発育相から最も早く生殖生長に転換する環境条件を与えたときの栄養生長相の早さ。栄養発育相の長いイネ品種は、低い感光性と低い感温性をもつものである。
きょうゆうせい 共優性 codominance ヘテロ接合体の状態で、両方の対立遺伝子の作用が、表現型として現れること。例として、ABO血液型がある。
きんこうけい 近交系 inbred line 交雑と自殖を繰り返すことによって、有用遺伝子の集積と有害遺伝子の除去を行い、遺伝的に固定された純系。これらの多くは、近交弱勢のため、生育が劣るが、F1品種の交雑親、また、合成品種を構成する系統として有用である。また、精密な実験材料としても重要である。
くみあわあせのうりょく 組合せ能力 combining ability 一般組合せ能力(general c. a.)と特定組合せ能力(specific c. a.)がある。一般組合せ能力は、ある系統がもつ平均的な組合せ能力をあらわすもの。その系統を多数の検定用系統(tester)と交雑して生じたF1雑種強勢の程度によって調べる。特定組合せ能力は、ある特定の系統間で示される雑種強勢の程度によって調べる。これらの組合せ能力を調べる際には、細胞質の効果も想定するならば正逆交雑を用い、想定しないならば片側交雑のみを行う。組合せ能力の検定法には、単交雑検定法(single-cross)、トップ交雑検定法(top-cross)、多交雑検定法(polycross)、総当り交雑法(diallel cross)がある。単交雑検定法は、特定組合せ能力の検定に用いられる。トップ交雑検定法では、多型的な材料との交雑から、一般組合せ能力の検定を行うもので、様々な遺伝子型を含む集団である放任受粉品種、複交雑品種合成品種を育成する際に有効である。また、多交雑検定法は、多年生作物に対する検定に用いられる。総当り交雑法は、ダイアレル分析(diallel analysis)を用いる検定法であり、n個の近交系内でのn(n-1)種類のF1とn個の親系統に対して検定を行うことで、一般組合せ能力と特定組合せ能力を同時に評価する手法である。
けいえいのごうりか 経営の合理化 水田裏作をより効率的に行うために早生コムギ品種を用いるなどの輪作の調節。強稈な耐倒伏性をもつイネ品種を用い機械化といった労力の節約。また、耐病虫性品種を用い薬剤と労力の節約。
げのむ ゲノム genome それぞれの生物の生活機能の調和の上で、欠くことのできない染色体の一組(木原均1930)。半数体の出現で、一つのゲノムだけで生存可能であることが証明された。2倍体生物の場合、配偶子に含まれる一組の染色体や遺伝子である。
げのむぶんせき ゲノム分析 genome-analysis 生物のゲノム構成を明らかにすること。特に染色体対合を利用して、ゲノム間の相同性を調べ、ゲノムの変遷や種の由来などを分析する場合をさすことが多い。木原均によるコムギ三群の分析が有名である。
こういきてきおうせい 広域適応性 wide adaptability 現在、品種の適地や栽培適期の特殊化にともない、育種コストが増加する傾向にある。そこで、より広範な条件に適応した広域適応性品種の育成が望まれる。しかし、極度の広域適応性品種の採用は、耐病虫性に対する抵抗性の遺伝適脆弱化、および、気象と土壌条件の異なる広い地域へ同一品種を導入することによって生じる諸問題をもたらす。
こうざつしんわせい 血G親和性 交配によって、後代が得やすい程度。遠縁交雑育種法で問題となる。
こうざつふしんわせい 交雑不親和性 cross-incompatibility 不和合性の一つ。遠縁交雑育種法で問題となる。両親間の遺伝的類縁関係の違いやゲノムの親和性の違いによって、交雑不和合性や雑種致死が生じ、雑種形成ができない現象。品種間、生態型間、亜種間といった種内交雑では、亜種間のような遠縁なものほど既存の変異を超えた形質をもつものが期待できるが、染色体の構造的変化による不稔性や染色体の対合が弱く遺伝子の組替えに制限が生じるといった問題もある。この種内交雑は、自然界でも生じている。種間交雑では、一般に、交雑の成功率は低く、雑種後代ができても不稔性を示すことが多い。この問題の打破するものとして、受粉前後のオーキシン処理による受精率や着果率の向上、また、試験管内受粉後に胚培養(embryo rescue)を行うといったことがある。属間交雑では、生殖的隔離が発達しているため、通常の受精は困難であり、細胞融合などの近代的手法が試みられている。
ごうせいひんしゅ 合成品種 Synthetic variety 混成品種(composite variety)とも呼ぶ。いくつかの作物を混合したもの。永年性牧草などに用いられる。育成は、雑種強勢育種法によって行う。多数の近交系のあらゆる組合せの交雑により合成され、以後、自然受粉種子によって維持される品種。育種操作が容易で、半永久的利用が可能である。また、変異性に富み、広い地域への適応が可能である。F2世代で雑種強勢の低下が生じるが、親系統が十分多ければ、ヘテロ接合体の頻度は、ハーディー・ワインベルグの平衡に達し、それ以上低下することはない。合成品種を構成する近交系は、そのため、10系統くらいが適度である。これよりも多いと、組合せ能力の劣る系統が入る危険がある。
こうだいけんてい 後代検定 progeny test 変異のうち、いずれの部分が環境変異などの非遺伝的変異で、いずれが遺伝的変異であるかを区別するために行う。また、表現型により鑑別された優良型について、さらに後代にも同じく優良形質が発現するかどうかを鑑定するためにも行う。デンマークのJohansenのインゲンマメの実験。
さいばいげんかい 栽培限界の拡大 例えば、早生耐冷性イネ品種の作出による北海道の稲作の北進に代表される地理的限界の拡大、また、生育期間が短く季節適応性の大きな品種を用いることで、任意の時期に栽培ができるものや野菜の周年栽培化などの季節的限界の拡大がある。
ざいらいひんしゅ 在来品種 local [native] variety 在来種、地方種とも呼ばれる。育成種(improved breed[variety])の対語。近代育種が始まる前に、それぞれの地方で育成・保存されてきた品種。長期間の自然淘汰によって、その環境条件に適応した型として成立している。豊富な遺伝変異をもち育種材料として貴重である。生態型として、存在しているということもできる。[生辞]
さくもつ 作物 crop, field crop 栽培植物のうち、森林植物や鑑賞植物を除いた、園芸作物、普通作物、特用作物を指す。さらに狭義では、園芸作物も除かれる。[生辞]
さくもつしゅうだんのいでんてきこうぞう 作物集団の遺伝的構造 genetic structure 自殖性作物は純系(pure line)であり、栄養繁殖作物はクローン(clone)であるため、両者とも品種内の遺伝変異はほとんど無い。他殖性作物は、遺伝的に固定していない。そのため、実用上支障がない程度まで均質性をもつように、一定以上の集団サイズで選抜と採取を行うことが必要である。
さくもつのそうばんせい 作物の早晩性 earliness 植物が季節変化を感知し、よりよい温度条件や水条件を備えた適当な環境下で生育・繁殖し、冬や乾期などの厳しい環境下を種子などで過ごすための性質。栄養発育相(基本栄養生長)から繁殖発育相(生殖生長)への相の転換の早晩により決定される。これは、基本栄養生長性感光性ならびに感温性といった生理的形質により支配される。高温と短日条件下である低緯度地方でのイネ栽培では、栄養生長が不十分なときに高温に遭遇しても生長相の転換が起こらないように、感温性を失わせ、感光性を大きくした品種(インドのAusやジャワTjereh、また、日本の暖地品種などを用いる)か、高温遭遇前に十分な基本栄養生長に達するように、早植えをすることが必要である。一方、低温と長日条件下である高緯度地域でのイネ栽培では、冷害を避けるために、長日条件下でも早期に出穂するよう、感温性を大きい品種を用いる。
さくもつのてきおうせい 作物の適応性 adaptability 適応性は、早晩性広域適応性および季節適応性に分類できる。
ざっしゅきょうせい 雑種強勢 heterosis ヘテロシスとも呼ぶ。雑種第一代が、ある形質において、いずれの親系統よりも優れていること。遺伝的要因として、同一遺伝子座の対立遺伝子の相互作用と異なる遺伝子座の相互作用が考えられる。同一遺伝子座モデルでは、F1のもつ対立遺伝子が、生理的機能に関してまったく違った作用をもち、両者が発現する共優性や、草丈やバイオマスなどの量的形質では、ヘテロ型の表現がホモ型のそれを超える超優性、また、各対立遺伝子が最高に作用できる環境が異なり、親系統よりも幅広い環境条件に適応できるといったものや、ヘテロ接合の状態で遺伝子産物の量が最適となる、もしくは、雑種酵素が生産されるといったものが考えられる。異なる遺伝子座によるモデルでは、親系統がもつ異なる優性遺伝子のF1個体への集積が考えられる。例えば、収量のような複合形質では、個々の形質が超優性を示さなくとも、複合形質が超優性となり得る(一株穂数と一穂重が、それぞれ、優れている親系統と等しいような場合)。
ざっしゅきょうせいいくしゅほう 雑種強勢育種法 breeding for heterosis ヘテロシス育種とも呼ぶ。人間にとって好都合な形質が雑種強勢によって高まることを利用した育種法。雑種性を利用しているため、遺伝的に固定できず、常に交雑して雑種を作り、育成することが必要である。合成品種やF1品種の育成に用いられる。F1品種の育成には、品種の均質性を確保し、雑種強勢を最大限に発揮させるため、また、近年、親系統の人工交雑から、親系統のもつ遺伝的雄性不稔性自家不和合性を利用した手法へと変わりつつあり、交雑親が遺伝的に固定した近交系であることが必要である。したがって、育成手順として、近交系の育成、近交系間の組合せ能力の検定が必要である。F1品種の採種法には、単交雑三系交雑複交雑に分けられる。

雑種強勢育種法に、雄性不稔性や自家不和合性を導入することで、母本を除雄することなく、混植自然受粉によって能率的な採種が可能となる。

雄性不稔性を利用した三系交雑の遺伝的モデルは、次のようなものである。ここで、雄性不稔を支配する細胞質遺伝子座の対立遺伝子のうち、雄性不稔関与のものをS、稔性関与のものをFとおく、また、同様に核内遺伝子について、雄性不稔性関与のものをrr、稔性関与のものをRRとおく。ここで、細胞質遺伝子がS、核内遺伝子がrrであるものを、[S (rr)]と示す。また、雄性不稔性となるものは、[S (rr)]のみである。すると、先の細胞質雄性不稔系統である近交系Aは、[S (rr)]である。母本を作り、かつ、近交系Aを維持するための近交系Bは、[F (rr)]であり、近交系A×近交系Bから、雄性不稔系統[S (rr)]を得る。ここに、稔性回復系統としての近交系C[F/R (RR)];細胞質遺伝子は、いずれでもよい;を交雑し、F1品種[S (Rr)]を得る。

自家不和合性を利用したものは、自家不和合性の遺伝子が異なり、組合せ能力の高い近交系を用意することが必要である。そのモデルとして、次のようなものがある。ここで、自家不和合性を支配する遺伝子座に対立遺伝子s1とs2をもつ個体を(s1/s2)のように表す。近交系A(s1/s1)×近交系B(s2/s2)により(s1/s2)を得る。また、近交系C(s3/s3)×近交系D(s4/s4)により(s3/s4)を得る。これらのF1をさらに交雑しF1品種を育成する。

さんけいこうざつ 三系交雑 three-way cross, triple cross F1品種の採種法の一つ。3つの近交系の交雑による。まず、近交系A×近交系Bにより、種子親の採種を行う。その種子親は、雑種強勢のため生育がよい。その種子親と花粉親としての近交系Cを交雑させ、F1品種を採種する。多収となるので、種子コストは、単交雑よりも低くなる。しかし、実際に、栽培される品種は、F2世代にあたるため、品種の均質性組合せ能力は低くなる。
じかじゅせい 自家授精 self fertilization カボチャやキュウリなどの一部の雌雄同株植物と、雌雄同熟花のうち、閉花受粉を行うものすべてと、開花受粉を行うもののうち、自家不和合性をもたない同型花が行う。これらを自殖性植物と呼ぶ。
じかじゅふん 自家受粉 self-pollination
じかふわごうせい 自家不和合性 self-incompatibility 不和合性の一つ。雌雄異熟花のすべてと雌雄同熟花の一部がもつ性質。雌雄同熟花の自家不和合性は、ベニアカバナ、アオイ、スモモやアブラナ科、禾本科作物のように、柱頭の分泌物が少なく、受粉後、花粉が柱頭上で発芽しないか、発芽しても花粉管が柱頭組織内に進入しないケースや、アカツメ草、ヤマユリ、タバコ、ペチュニア、クローバや多くの果樹類のように、花粉管が柱頭組織内に進入しても、伸長不良を示すケースがある。これらのものを自殖させる手段として、自家和合性阻害物質(oppositional substances)が少ないか生成されない時期を利用する、つぼみ受粉(bud pollination)や遅延受粉(delayed pollination)がある。また、高濃度炭酸ガス処理や高温処理によって、自家不和合性を回避させる手段もある。多くのアブラナ科蔬菜の自家不和合性系統は、つぼみ受粉によって維持する。

自家不和合性の遺伝学的説明として、配偶体型と胞子体型があり、ともに、自家不和合性を支配するs遺伝子座に、共優性を示すいくつかの複対立遺伝子の存在を仮定する。配偶体型自家不和合性は、離反遺伝子説(oppsitional factor hypothesis)によって説明される。これは、花粉と柱頭が共通のs遺伝子をもつときに自家不和合性を生じるとするものである。これらは、ペチュニア、タバコ、クローバ、ライムギや果樹類に見られる。この配偶体型に対しては、減数分裂期の放射線処理や倍数化によって、不和合性が消失する場合があることが知られている。胞子体型自家不和合性は、花粉親と種子親が、一つでも共通のs遺伝子をもつときに、自家不和合性が生じるとするものである。したがって、反応は、all or none、つまり、結実が全く見られないか、全て結実するかのいずれかであり、配偶体型のような部分不稔は生じない。これは、アブラナ科植物やサトウダイコン、ヒマワリに見られる。

じしょくじゃくせい 自殖弱勢 inbreeding depression 近交弱勢とも呼ぶ。
じしょくせいしょくぶつ 自殖性植物 autogamous plant 自然交雑率が4%以下で自家授精を主に行うもの。イネ、コムギでは1~2%、ダイズ、オオムギでは1%以下、トマトでは3~4%である。自殖性作物は、上記以外に、エンバク、エンドウ、インゲンマメ、ナスなど作物の大半を占める。同一の遺伝子型の集団であるので、品種の均質性と永続性をもつ。自殖を行う集団では、毎世代ごとに、ヘテロ接合体の割合は、理論上、半減していく。ここで、各遺伝子型とも適応度が同一(繁殖力や生存力に差がない)であり、突然変異、機会的浮動、移住といったものがないならば、対立遺伝子A-aについて、接合体型AAとaaの頻度が同じとき、g分離世代における、ヘテロ接合体型の割合は1/(2^g)、ホモ接合体型の割合は1-1/(2^g)である。さらに、これを拡張して、対立遺伝子数がr個ある場合では、ホモ接合体型の割合は{1-1/(2^g)}^rである。
しずいせんじゅくか 雌蕊先熟花 progynous flower オオバコ科、アブラナ科、イヌサフランなど。
しつてきけいしつ 質的形質 qualitative character 変異に対する環境による影響は少ない。
しゆういかぶ 雌雄異株 dioecism 二家花とも呼ぶ。単性花をつける種子植物のうち、雄株、雌株というように、雄花と雌花を、それぞれ、別の個体上につけるもの。他家受粉を行う。
しゆういかぶしょくぶつ 雌雄異株植物 dioecious plant ホウレンソウ、アスパラガス、アサなど。
しゆういじゅくか 雌雄異熟花 adichogamous flower 雌蕊と雄蕊のどちらが先に熟すかで、雄蕊先熟花雌蕊先熟花に分かれる。自家不和合性のため他家授精のみを行う。
しゅうだんせんばつほう 集団選抜法 mass selection 他殖性作物に対して用いられる。
しゆうどうかぶ 雌雄同株 monoecism 一家花とも呼ぶ。単性花をつける種子植物のうち、雄花と雌花が同一個体上にあるもの。カボチャやキュウリは、自家受精他家受精の両方を行う。トウモロコシは、雄蕊先熟(protandorous flower)により、自家受精を抑制し、他家受精のみを行う。
しゆうどうかぶしょくぶつ 雌雄同株植物 monoescious plant トウモロコシ、カボチャやキュウリなど。
しゆうどうじゅくか 雌雄同熟花 dichodamous flower 閉花受粉をするものと開花受粉をするものに分けることができる。閉花受粉をするものは自家受精のみを行う。開花受粉をするもののうち、ほとんどの異型花、および、自家不和合性をもつ同型花は、他家受精をおこなう。
しゅしこうしん 種子更新 自家採種を繰り返すと、種子の混入、他家受粉、突然変異や種子伝染病の感染などにより、品種が退化していく。このため、自家採種ばかりでなく、種子行進を行うことが必要である。また、近年では、コンバインを用いることが多く、種籾を毎年、購入することが多くなっており、イネ品種の退化が起こることは少ない。
じゅんおう 順応 adaptation, accomodation 反応の対語。持続的刺激による感受性の低下。例えば、感覚の順応。生理学的用語として用いる。持続的な環境条件に対して、生体の機能や性質、状態が緩慢な時間経過と共に変化すること。[生辞]
じゅんか 順化 acclimatation 馴化とも呼ぶ。気候風土の著しく異なる外国から新しい作物を導入する際に、国内でもなるべく環境の似た場所に導入し、漸次、国内の気候に適応させる手段をとること。その様な第一の場所として、熱帯および亜熱帯植物に対する石垣島の熱帯農業研究センターがある。また、生物学的には、生物の高地移動や季節変化、淡水と海水間の移動などの新しい環境に対応するための数日から数週間要する適応のことをいう。さらに広義では、生物の示す適応や順応も含まれる。元来は、気候(clima)に対する適応から気候順化(acclimatation)と名付けられたものだが、上記のように、高地順化なども含められている。[生辞]
じゅんけいとうたほう 純系淘汰法 pure line selction 自殖性作物に対して用いられる。
しんとうど 浸透度 penetrance 遺伝子型によって現れるべき表現型は、条件によって、必ずしも、同一の遺伝子型個体群に同じように発現されない。遺伝子の表現効果は、絶対的なものではない。ここで、同一遺伝子型をもつ個体群のうち、実際に発現される個体数の頻度を浸透度という。浸透度は、変更遺伝子や環境条件、性や遺伝子作用能力が微弱で発現の閾値に達しないといったことに左右される。
しんひんしゅせいりつの 新品種成立の3条件 1. 優秀性 何らかの性質において既存品種よりも優れていること。 2.均質性 熟期、草丈や品質において、実用上、支障のない程度にそろっていること。 3. 永続性 種子や栄養体で繁殖した場合、その品種の特徴が永続すること。
せつごうたいはいれつ 接合体配列 zygotic array 任意交配のもとでは、接合体配列は、雌親と雄親の配偶子配列の積で表すことができる。対立遺伝子A-aについて、集団内の遺伝子Aの頻度をp、遺伝子aの頻度を(1-a)とおけば、雄集団も雌集団も同じ遺伝子型頻度であるならば、雌親と雄親の配偶子配列は等しく、それらは共に、pA+(1-p)aである。これらの任意交配による次代の受精直後の接合体配列は、これらの積、p2AA+2p(1-p)Aa+(1-p)2aaというように表すことができ、各遺伝子型の頻度を得ることができる。ここで、このように、雌親と雄親の配偶子配列が等しいとき、一回の任意交配で、ハーディー-ワインベルグの平衡に達する。
せんたくじゅせい 選択受精
たかじゅせい 他家授精 cross fertilization 野生植物の大半の受精様式である。雌雄異株植物雌雄異熟花のすべて、カボチャ、キュウリなどの一部の雌雄同株植物と一部の雌雄同熟花が行う。これらの植物を、他殖性植物と呼ぶ。他家受精をする大集団には、 ハーディ-ワインベルグ平衡によって、遺伝的多様性を維持されており、環境の変化や進化に対して有利である。たとえば、野生集団内には、ある環境下では適応度が低いが、それと異なった環境にはよく適応するような劣性遺伝子、また、ある野生の個体全体が示す農業形質が劣っていても、ある一形質(例えば、品質や成分)に対して際立った特徴を示す劣性遺伝子が、消失せずに保有されている可能性が高い。このように、野生集団は、遺伝資源として非常に有用である。逆に、人為的な環境操作による生息地の縮小などで、集団の大きさが小さくなったり、自殖が続くような場合、ホモ化が生じて、自殖弱勢の原因となる。
たかじゅふん 他家受粉 cross pollination
たしょきうせいしょくぶつ 他殖性植物 allogamous plant 自家受粉が5%以下で、他家受精を主に行うもの、。作物として用いる場合には、遺伝的に固定した集団ではないので、実用上差し支えのない程度の均質性を保持できるように、一定のサイズ以上の集団から採種を行うか、選抜を行う必要がある。作物では、トウモロコシやライムギ、ソバ、ヒマワリ、テンサイ、ホウレンソウ、イネ科およびマメ科の牧草などがある。受粉様式は、イネ科牧草は風媒、ソバやマメ科は虫媒である。
たんこうざつ 単交雑 single cross F1品種の採種法の一つ。2つの近交系の交雑による。優良組合せの選定が容易で、F1における雑種強勢の発現が顕著である。各形質とも均質性があり、不良形質の発現は少ない。ただし、種子親として用いる近交系が、自殖弱勢のために生育が著しく劣る場合、採種量が少なくなり、種子の単価が高くなる。したがって、コストが高くても採算の取れる、品質重視の缶詰用スウィートコーンやハクサイなどに利用される。
たんせいか 単性花 unisexual flower 雄花や雌花というように、雌蕊(めしべ)か雄蕊(おしべ)しかもたない花のこと。雌雄同株のものと雌雄異株のものがある。
てきおう 適応 adaptation 生物のもつ遺伝的な形態や生理・生態的性質が、その環境のもとでの生活の仕方にうまく合致していること。広義では、非遺伝的な影響を含まれるが、狭義ではこれらは、調節・調整・順応として区別される。[生辞] 作物の適応性
どうぎいでんし 同義遺伝子 multiple gene, polymeric gene 遺伝子座の異なる2つ以上の遺伝子が共通する形質を発現するとき、これらを同義遺伝子という。各遺伝子の作用が、補足的に働く場合と累積的に働く場合がある。

補足的に働き、かつ、2遺伝子座間に連鎖がなく、各遺伝子座に2対の対立遺伝子を考えたとき、一つでも優性遺伝子を持てば作用するので、分離比は(9+3+3+1):1となる。これらを重複遺伝子(duplicate gene)と呼ぶこともある。

累積的な場合、各遺伝子座の遺伝子が、共に不完全優性であれば、その作用は不完全優勢の遺伝子の数(dose)に応じて変化する。例えば、3遺伝子座を考えた場合、優性遺伝子の数に応じて、作用は6段階に分類される。関与する遺伝子座数が多くなると、その段階は連続的なものとなる。これを複数遺伝子、さらに遺伝子数が多い場合、ポリジーンと呼ぶこともある。

どうるいこうはい 同類交配 assortative mating
とおえんこうざついくしゅほう 遠縁交雑育種法 remote crossing method 種や属などの異なる両親間で交配を行い、後代に現れる幅広い変異の中から新品種や育種材料を選び出す育種法。ここで問題となるのは、両親間の交雑親和性交雑不親和性である。
にんいこうはい 任意交配 random mating 交雑の機会が配偶子の遺伝子型の頻度のみに依存すること。つまり、極度な同類交配異類交配がなく、交雑不和合性、自家不和合性雄性不稔性選択受精などにより他殖が妨げられない状態にあること。
はーでぃ・わいんべるぐのほうそく ハーディ・ワインベルグ平衡 Hardy-weinberg's equilibrium 突然変異、自然選択、移住、機械的浮動などの進化要因がなく、かつ、十分に大きな集団が任意交配を行う場合、集団内の遺伝子型頻度は、世代に関係なく一定である。ここに、対立遺伝子A-aについての、遺伝子Aの頻度をp、遺伝子aの頻度を(1-p)とおけば、任意交配によって生じる次世代の接合体配列(接合体の遺伝子型頻度)は、p2AA+2p(1-p)Aa+(1-p)2aaとなる。この世代が、さらに任意交配をする場合、この世代がもつ配偶子配列は、[p2+p(1-p)]A+[p(1-p)+(1-p)2]a=pA+(1-p)aとなり、先代における配偶子配列と同値となる。世代によらず配偶子配列が同値であるということは、次代に生じる接合体配列もまた等しいことを意味する。このように、雄親と雌親のもつ配偶子配列が同値のときは、一回の任意交配で、ハーディ-ワインベルグの平行に達する。そうでない場合は、何回かの任意交配で、平行に達するようになる。
はいぐうしはいれつ 配偶子配列 gametic array 接合体配列
ばいすうたい 倍数体
ハイブリッドライス ハイブリッドライス hybred rice イネのヘテロシスを利用したF1品種。多収性に優れ、中国、韓国、アメリカで実用化されている。日本では、飼料米育成を目標とする超多収品種の育成が試みられているが、食用米では、米の生産過剰により立ち遅れた。育成には、母本の除雄や核遺伝子型および細胞質型の雄性不稔性を利用したものがあげられるが、実用化されてものは、細胞質型雄性不稔性のものである。この細胞質型雄性不稔系統を母本とし正常型を父本とした、両者の間作による自然交雑では、稔性は10%ほどでかなり低いものである。雄性不稔系統の維持は、雄性不稔維持系統を用いる。雄性不稔維持系統の維持は自殖による。雄性不稔維持系統と、核内に雄性稔性回復遺伝子をもつ稔性回復系統を交配することで、稔性をより高め、F1種子を得る。しかし、間作でより高い稔性を求める場合は、風を起こしたり、振動させるなどして、花粉を散らし稔性を高めるなどの工夫が必要で、経費や労力の点で改善が望まれる。したがって、他殖性野生種の遺伝的特性の導入や、花粉に関して、より多くの生産量、より長い寿命、また、より大きな飛散をもつ父本系統への改良が試みられている。実際のF1品種の花粉稔性は約50%ほどであるが、受精に十分な正常花粉量があるので、稔性に関しては問題はない。

また、環境感応型雄性不稔系統、特に光周感応型の母本の育成が試みられている。これは、長日条件下では不稔性を示すので、父本との交配が可能となり、短日条件下では花粉稔性が回復するので自殖を行い系統維持が可能となるものである。

はんのう 反応 reaction 外的条件の急激な変化に対して生じる生体変化。
ひそうかてきいでんぶんさん 非相加的遺伝分散 遺伝子の相互作用が表現型に及ぼす分散。異なる遺伝子座にある遺伝子の相互作用として、補足(complementary)、重複(duplicate)、複数(multiple)、抑制(supressor)、優性上位(dominant epistasis)、劣性上位(recessive epistasis)などがある。ここで、2遺伝子座(対立遺伝子Aとaをもつものと、Bとbをもつもの)による相互作用を考える。

相互作用のないとき、両性雑種AaBbの後代では、(AABB+2AABb+2AaBB+4AaBb):(Aabb+2Aabb):(aaBB+2aaBb):(aabb)と分離が生じ、

A-B-:A-bb:aaB-:aabb=9:3:3:1の表現型分離が期待される。

相互作用のある時、期待される分離比は以下のものである。

補足では、A-B-:(A-bb+aaB-+aabb)=9:7、

重複では、(A-B-+A-bb+aaB-):(aabb)=15:1、

複数では、A-B-:(A-bb+aaB-):aabb=9:6:1、

抑制ではA-bb:(A-B-+aaB-+aabb)=3:13、

優性上位では、(A-B-+A-bb):aaB-:aabb=12:3:1、

劣性上位では、A-B-:A-bb:(aaB-+aabb)=9:3:4

ひょうげんがた 表現型 phenotype 対象となる個体が示す形態的や生理的特徴。個体のもつ遺伝子型環境によって影響を受ける。一定環境下では、生物のもつ遺伝子型に規定される。ただし、表現型が同じでも、遺伝子型が等しいとはいえない。

劣性遺伝子などの潜在的な遺伝子も含め、n個の対立遺伝子数を持つ個体は、自殖によって、F2世代において表現型の分離がみられる。

ひょうげんがたぶんさん 表現型分散 集団を構成する個々体の表現型の分散。これは、遺伝子型、発育段階および環境によって生じる分散を互いに独立なものとすれば、それらの和として表すことができる。

表現型分散Vp

=遺伝子型分散Vg+発育段階による分散Vd+環境分散Ve

人為的な環境下では、簡単化のためにVe=0とおかれる。

さらに、

遺伝子型分散Vg=相加的遺伝分散Va+非相加的遺伝分散Vu

であり、相加的遺伝分散は固定可能な遺伝子型によるものであり、非相加的分散は、優性分散Vdomとエピスタシス分散Viといった、遺伝的に固定できない遺伝子型による分散からなる。

ひょうげんど 表現度 expressivity 発現度とも呼ぶ。遺伝子型によって現れるべき表現型は、条件によって、必ずしも、同一の遺伝子型個体群に同じように発現されない。遺伝子の表現効果は、絶対的なものではない。たとえば、目無しのショウジョウバエの突然変異の程度は様々である。ここで、各個体における、遺伝子作用が表現型として発現する程度を表限度という。表現度は、選択、変更遺伝子、栄養や温度などの環境因子や性によって決まる。
ひんしゅのかいぜん 品質の改善 例えば、成分育種の対象として、紅茶のタンニン含量、ハッカの油含量、除虫菊のピレトリン含量がある。さらに、パン生産に適した硬質コムギとなるグルテン含量の多い農林40, 41, 42号の作出、アミロース含量を低減させることで、より食味のよいイネ品種の作出、種なしスイカやより長い糸をもつ繭をつくる家蚕、大輪咲となる4倍体ペチュニアの作出がある。
ひんしゅのへんせん 品種の変遷 イネでは、敗戦後から近年までに、多収性を備えたものからより味の良い品種へと変化し、スイカやキャベツは、核家族化にともない、小玉の品種へと変遷してきた。また、肥料吸収力の強い在来品種から、多量の化学肥料に対応した多肥多収型品種へと移り変わっている。青森県における作付面積が最大であったイネ品種は、長稈で倒伏しやすい陸羽132号(戦前)~多肥多収型の藤坂5号(1955)~品質は劣るが耐冷性強のトワダ(1957)~フジミノリ(1965)~半矮性遺伝子sd1をもつ耐倒伏性で多肥多収型品種のレイメイ(1970)~フジミノリの突然変異による良品質のアキヒカリ(1980)と変化してきた。このように、優れた品種が育成されたり、生産者や消費者の品種に対する要求が時代と共に変化するため、主要作物品種の寿命は、一般的に数年間である。例外として、コシヒカリ(1956~)やコムギ農林61号(1944~)がある。
ふくこうざつ 複交雑 double cross F1品種の採種法の一つ。4つの近交系の交雑による.。近交系A×近交系Bより種子親を採種、また、近交系C×近交系Dにより花粉親を採種し、それらを交雑親として、F1品種を育成する。交雑親が共に雑種強勢のため生育がよく、交雑によって大量のF1品種を得ることができるので、種子コストをかなり低くすることができる。また、父本、近交系C×近交系DのF1種子を生産物として販売することも可能である。しかし、優良組合せの選定が困難であり、F1品種の均質性は、非常に低いものとなる。アメリカのトウモロコシ栽培では、近交系の水準が高くなったことで、複交雑から単交雑へと推移してきた。
ふくたいりついでんし 複対立遺伝子 multiple alleles 同一遺伝子座にあって、形質発現に対する作用を少しずつ異にする遺伝子群。ショウジョウバエの眼色やヒトの血液型など。
ふねんせい 不稔性 sterility 花粉や胚のうなどの性器の異常により、正常な受粉が行われても結実しない現象。また、異常によらない不稔は、不和合性と呼ばれる。不稔性は、要因によって以下のように分類できる。

雌性器官の異常によるもの

1. 雌蕊退化による重弁花;多くは遺伝的であるが、コスモスやキクでは環境による

2. 胚のう母細胞の減数分裂の異常によるもの;栄養的原因と遺伝的要因がある。遺伝的なものは、特定の致死遺伝子の作用である場合が多く、花粉不稔と同時に起こるものがある

雄性器官の異常によるもの

1. 葯や雄蕊の退化

2. 花粉不完全によるもの(多くのケースでこれが該当する)

2-a. 環境的原因;栄養状態、温度や病気など

2-b. 遺伝的原因;上海水蜜桃やイネのindica×japanica後代の小胞子退化、また、半数体や三倍体、種や属間雑種などに見られる減数分裂異常など(染色体の対合が不完全であるため)。ここで、遺伝的な雄性不稔性は、F1品種などの育種上で重要な材料となる。

ふわごうせい 不和合性 incompatibility 雌蕊、雄蕊とも正常で生殖能力をもつにもかかわらず、受粉しても種子を結実しない現象。生殖器官の異常による場合は、不稔性と呼ばれる。不和合性には、大きく分けて、自家不和合性交雑不親和性がある。
ぶんりいくしゅほう 分離育種法 純系淘汰法と集団選抜法からなる。
へんこういでんし 変更遺伝子 modifer 主働遺伝子の作用を変化させる遺伝子。変更遺伝子そのものの単独作用は、普通、表面化しない。例えば、色素に関するものが知られている。黒色毛色を生じる主働遺伝子と、それを淡色化させる劣性変更遺伝子群がある場合、灰色、褐色化することが知られている。
へんしゅ 変種 variety 基本種と明らかに少なくとも2,3の形質(花の色や姿勢、葉形など)が異なり、地理的に特異的な分布圏をもつもの。これに対して、ただ1つの形質で異なるものは品種として扱う。一つの種が新しい環境に広がるにつれて、新しい生態型が分化し、これがやがては新しい変種より他の種へと発達する。この新しい環境に反応して生じる、一つの種内の遺伝組織を異にする個体群の分化は品種成立の第一歩である。さらに亜種から種へと発展する。[生辞]
ぽりじーん ポリジーン polygene 複数遺伝子の数が多く、それぞれの作用が小さく、道義的に補足しあう場合、これらの遺伝子群は、量的に計測できる形質の発現に関与し、連続的な変異を生み出す。これらの遺伝子群をポリジーン系と呼ぶ。環境の変異に対する影響が大きく、量的形質を生じる。ポリジーン系を構成する一つ一つの遺伝子をポリジーンと呼ぶ。
みしょうはんしょく 実生繁殖 seed propagation 種子によって繁殖する様式。育種上、倍数体の利用は、減数分裂での問題が生じやすい。
みどりのかくめい 緑の革命 green revolution 強稈かつ短稈で耐病性を備えた近代イネ品種の作出によって、耐倒伏性が向上し、施肥量を増やすことが可能となったことと、肥培管理(施肥や育苗、病害虫防除など)技術の発達によって、収量の増加がもたらされた。
めんでるしゅうだん メンデル集団 mendelian population 集団遺伝学が基本的な対象とする集団や個体群のこと。有性繁殖の可能性を通して結ばれた同種個体の集合。全体として一つの繁殖社会を構成している各個体は、ある共通の遺伝子給源を分かち合い、それぞれの遺伝子型を作ることができる。最大のメンデル集団は、種である。例えば、日本人という集団も一つのメンデル集団である。
ゆうずいせんじゅくか 雄蕊先熟花 protandrous flower ヤナギラン属やキク科など。
ゆうせいふねんせい 雄性不稔性 male sterility 葯の退化などによる雄性器官の異常による不稔性。searsによると、遺伝的雄性不稔性は、以下のように分類される。

A型(CMS ; cytoplasmatic genetic male sterility) 核内遺伝子と細胞質の相互作用によるもの。タマネギなどに例がある。

B型(cytoplasmatic male sterility) 細胞質によるもの。例としてトウモロコシなど

C型(GMS ; genetic male sterility) 核内遺伝子によるもの。イネ(ハイブリッドライス)、トウモロコシ、オオムギ、キビ、トマトなどに例がある。

りょうせいか 両性花 bisexual flower 被子植物の一つの花の中に、雌蕊と雄蕊を共に有する花。雌雄同熟花雌雄異熟花がある。
りょうてきけいしつ 量的形質 quantitative character 変異に対する環境の影響は大きい。遺伝的な優良性を確認するためには、後代検定を行う。ポリジーン支配である。

 

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